館主が若き日に憧れを持って足を踏み入れた東京・銀座。そこには現在のブランドショップの比ではない精神的な高嶺の花が数多くありました。高級呉服、和装小物、履物、そしてその名に相応しい気品を持った舶来製品…

いまだその気風と暖簾を守っている名店もございますが、時代の流れに逆らえず姿を消した愛すべき店々も多くございます。

そんな中の一つが江戸指物と手漉き和紙製品の銀座・平つか。館主の常宿のほど近くにあり、上京の度に金封や便箋を求めるのが楽しみでした。自らの婚礼に龍村の裂を貼った状さしをお配りしたほどです。

そんな平つかさんも今では銀座の店を引き払い、一部のお店に品を卸しつつ脈々と江戸の仕事を伝えていらっしゃいます。

アッサリ恬淡として気張り過ぎないのが江戸の粋。そう言えば私が東京に住まいして一番カルチャーショックを受けたのが「程がいい」という東京人の価値観でした。

ニヒリズムにも通じるこの美学を紙一重に湛えた名品を、人生の節目にどうぞ。